なぜ通所介護は、忙しいのに楽にならないのか― 5つの課題が連鎖する構造を読み解く ―

通所介護・地域密着型通所介護の現場では、
「利用者数は横ばい、あるいは減っていないのに、なぜか余裕がない」
「職員は常に忙しいのに、業務が軽くなる実感がない」
といった声が多く聞かれます。
この“忙しさ”は、
単に人手が足りないから、仕事量が多いから、という理由だけでは説明できません。
本記事では、通所系サービスの現場が 「忙しいのに楽にならない理由」 を、
5つの課題が連鎖する構造として整理します。
「忙しさ」が慢性化している通所系サービスの現場
利用者が増えても余裕が生まれない理由
通所系サービスでは、
定員・稼働率・加算取得など、数字上は一定の成果が出ていても、
現場の負担感が軽減しないケースが少なくありません。
その背景には、
- 業務が年々複雑化している
- 記録・書類・対応の質が求められる範囲が広がっている
- 利用者像が多様化している
といった 「仕事の中身そのものの変化」 があります。
業務量では説明できない違和感
もし単純に業務量だけが問題であれば、
- 人を増やす
- 定員を調整する
ことで解決できるはずです。
しかし実際には、
人を補充しても、定員を抑えても、
忙しさが解消されない 事業所が多いのが現実です。
これは、
忙しさの原因が 個別の業務ではなく、構造そのもの にあることを示しています。
5つの課題が連鎖する構造

通所系サービスの現場では、
次の5つの課題が 一方向に連鎖 しています。
人材不足がすべての起点になる
多くの通所系事業所では、
- 採用が難しい
- 経験者が定着しにくい
- ベテラン職員の高齢化が進んでいる
といった人材課題を抱えています。
この結果、
- 1人あたりの業務負担が増える
- 「とにかく回す」運営になる
という状態が常態化します。

ICT導入が進まず、業務が属人化する
人手に余裕がないと、
- 新しい仕組みを考える時間がない
- ICT導入・研修に手をつけられない
という状況に陥りやすくなります。
その結果、
- 紙記録・手作業が続く
- 情報共有が口頭中心になる
- 業務が特定の職員に依存する
といった 属人化 が進みます。

個別支援計画が「書類」になりやすい
ICT活用や業務整理が進まない中で、
個別支援計画は、
- ケアプランの転記
- 抽象的な目標の羅列
- 実践と切り離された書類
になりがちです。
計画が「使われない書類」になると、
- 支援の優先順位が曖昧になる
- 振り返り・改善が行われない
という状態に陥ります。
軽度者支援が弱体化する
個別支援計画が機能しないと、
特に影響を受けやすいのが 要支援者・軽度者への支援 です。
- 生活機能の変化に気づきにくい
- 予防的な関わりが後回しになる
- 「今は問題ない」という判断が続く
結果として、
軽度者支援が“手薄”な状態 になりやすくなります。
重度化リスクが高まる
軽度期の支援が十分でない場合、
- 生活機能が徐々に低下する
- 利用ニーズが増える
- 要介護度が進行する
といった 重度化リスク が高まります。
すると、
- さらに支援の手間が増える
- 職員の負担が増大する
という形で、
再び 人材不足の問題に跳ね返ってくる のです。
なぜ現場改善だけでは限界があるのか
属人化と疲弊のループ
この5つの課題は、
- 現場職員の努力
- 一時的な改善活動
だけでは断ち切れません。
なぜなら、
人材不足・制度要件・地域特性といった
事業所単体では変えられない前提条件 が絡んでいるからです。
制度・体制の影響を無視できない理由
第9期介護保険事業計画では、
- 生産性向上
- 介護予防・重度化防止
- 地域包括ケアの中での役割
が同時に求められています。
これは、
通所系サービスが 「回せているか」だけでなく
「どう機能しているか」 を問われる時代に入ったことを意味します。
「頑張る」から「整理する」への視点転換
今年、変えなくてよいこと
まず確認したいのは、
すべてを一気に変える必要はない という点です。
- 職員の努力
- 現場の工夫
- これまで積み重ねてきた運営
を否定する必要はありません。
今年、整理すべきこと
一方で、今年は次の点を整理する必要があります。
- 自事業所は、どの層を主に支えているのか
- 軽度者支援をどこまで担うのか
- 記録・計画・評価は本当に現場で使われているか
これは「改革」ではなく、
整理と見直し の作業です。
まとめ|忙しさの正体は「構造」にある
通所介護・地域密着型通所介護の現場が
忙しいのに楽にならない理由は、
職員の頑張りが足りないからでも、
経営努力が不足しているからでもありません。
- 人材不足
- ICT導入の遅れ
- 個別支援計画の形骸化
- 軽度者支援の弱体化
- 重度化リスクの上昇
これらが 構造的に連鎖している ことが、
忙しさの正体です。