2026年の労働法改正は介護事業にどう影響する?全体像まとめ(総論)

2026年 労働法改正|介護事業者が押さえるべき4つの柱
目次

2026年に予定されている4つの主な労働法改正(総まとめ)

まずは、大枠の概要を一度整理しておきましょう。

① 労働基準法の見直し(勤務時間・休日のルール変化)

2026年前後で最も注目されているのが、「連続勤務14日上限」「勤務間インターバル制度の義務化」といった、勤務時間・シフト運用のルール変更です。

代表的な論点は以下の通り:

  • 連続勤務の上限(14日以上連勤不可)
  • 勤務間インターバル(退勤→次出勤まで原則11時間)を義務化
  • 法定休日の明示義務
  • 週40時間原則の再徹底(週44時間特例廃止方向)
  • 有給の算定方法が「通常の賃金」基準に統一される方向

介護事業はシフト・夜勤・不規則勤務が多いため、この部分の影響は非常に大きくなります。

② 労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)の改正

2026年の改正では、これまで努力義務に近かった
「カスタマーハラスメント(利用者・家族からの暴言・過度要求等)」
への対策が義務化される見込みです。

介護業界は利用者・家族との距離が近く、カスハラが深刻化している背景から、次の措置が必要になります。

  • カスハラ対策の方針・ガイドラインの策定
  • 利用者・家族への「不当要求は受けられない」旨の明文化
  • 記録・報告体制の整備
  • 相談窓口の設置
  • 職員研修の実施

③ 公益通報者保護法の改正(内部通報制度の強化)

コンプライアンス強化の流れから、介護事業所にも内部通報制度の整備が求められます。

  • 保護対象が「フリーランス・個人委託・派遣」にまで拡大
  • 通報者の秘密保持・報復禁止を厳格化
  • 通報窓口の設置義務が明確化
  • 調査手続・記録管理が必須項目に

職員間トラブル、利用者家族・外部関係者からの通報などへの対応がより慎重に求められます。

④ 労働安全衛生法の改正(高齢職員・メンタルヘルスの強化)

介護業界では60〜70代職員が増加していることから、次のような安全衛生規制の強化が予定されています。

  • 60歳以上の高齢労働者の安全配慮を強化(努力義務→義務化へ)
  • ストレスチェックの対象拡大
  • 健康管理体制の整備(産業医、衛生委員会等の見直し)
  • 転倒・腰痛など職業病対策の強化

介護現場では高齢職員の「無理のない働き方」「正しい動作・介助方法」がより重視されます。

2026年改正が介護事業に与える“本当の影響”はどこか?

表面的な改正内容以上に重要なのは、以下の「3つの根本的変化」です。

① シフト設計と勤怠管理の再構築が必要になる

特に施設系・夜勤ありの事業所では、

  • 夜勤明け → 早番
  • 遅番 → 早番
  • 月半ばの“連勤続き”

といったシフト組みが法的に許容されなくなる可能性があります。

これにより、

  • 人員配置基準内でのシフト最適化
  • 勤務間インターバル自動チェック機能
  • 代行業務・オンコールの見直し
  • 人員不足時の「応援」体制の構築

が必須になります。

② ハラスメント対応が採用・離職率に直結する時代へ

介護人材不足が深刻化する中、
「職場環境の良さ」=最大の採用力
になりつつあります。

利用者や家族からの不当要求に対する組織的な防御がなければ、
真面目な職員ほど疲弊し辞めてしまいます。

今回の法改正は、
「職員を守る組織」をつくる後押し
とも言えます。

③ コンプライアンス体制の整備で事業継続性が問われる

内部通報制度の整備やハラスメント対策は、監査・行政指導とも関係するため、
「体制を整えていない=リスク」
という視点が強くなります。

特に法人本部を持つグループ事業者では、

  • グループ内の統一ルール
  • 通報窓口の一元化
  • 全事業所への周知
    が求められます。

経営者が今から取り組むべき“3つの準備”

2026年までにやるべきことは次の3つです。

① 就業規則・シフト設計の事前監査

  • 連続勤務の上限
  • 夜勤明けの勤務間隔
  • 法定休日の特定状況
  • 有給の賃金算定
  • 時間外労働の管理

これらをいま一度見直すことが重要です。

② ハラスメント・カスハラ対応の整備

最低限必要なのは以下の4点:

  • カスハラ対応マニュアル
  • 記録・報告のフロー
  • 職員研修資料
  • 利用者・家族向けの利用契約の見直し

③ 内部通報制度の整備

  • 通報窓口(社内/外部)の設置
  • 報復禁止の明文化
  • 調査手順のガイドライン
  • 記録の保存ルール

介護事業者として信頼性向上にもつながります。

まとめ:2026年改正は「負担」ではなく“働き方改善の機会”

2026年の労働法改正は、決して“業務負担が増えるだけ”ではありません。

むしろ、

  • 離職率を下げる
  • 採用力が上がる
  • 職員の健康と安全が守られる
  • 経営リスクを低減できる

という「組織力の強化」につながる改革です。

2026年 労働法改正|介護事業者が押さえるべき4つの柱

  • 労働基準法:勤務時間・シフトの再構築
    • 連続勤務14日ルール
    • 勤務間インターバル11時間
    • 法定休日の明示義務化
  • 労働施策総合推進法:カスタマーハラスメント対策の義務化
    • 利用者・家族からの不当要求への組織的対応が必須
    • 相談窓口・マニュアル・記録体制の整備
  • 公益通報者保護法:内部通報制度の強化
    • フリーランス・個人委託・派遣も保護対象に拡大
    • 報復禁止の厳格化と調査・記録管理の明確化
  • 労働安全衛生法:高齢職員とメンタルヘルス対策
    • 高齢労働者への安全配慮義務の強化
    • ストレスチェック制度の対象拡大
2026年 労働法改正|介護事業者が押さえるべき4つの柱

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