2026労基法改正|連続勤務14日制限と勤務間インターバル義務化で介護事業のシフトがどう変わる?

2026年の労基法改正は「シフト再設計」の始まり
2026年前後に予定されている労働基準法の見直しは、
介護事業所のシフト運用と勤怠管理に大きなインパクト を与えます。
特に注目されるのが、
- 連続勤務の上限(14日以上連続勤務禁止)
- 勤務間インターバル(退勤 → 次の出勤まで11時間以上)
という2つの新しい勤務時間ルールです。
介護事業は、夜勤、早番・遅番、オンコール、緊急対応など、「不規則勤務」が当たり前の職種です。そのため、この改正は単なる“制度変更”ではなく、
シフトの組み方そのものを変えざるを得ないレベルの構造改革 といえます。
本記事では、介護現場の実務に落とし込んで、シフトがどう変わるのかを明確に解説します。
連続勤務「14日上限」が導入されるとどうなるか?
従来
労基法の休日規定は「4週4休」など、かなり柔軟で、
理論上は「10連勤・12連勤」なども運用上は可能でした。
改正後(案)
連続勤務は最大14日まで。15日以上の連勤は禁止。
介護現場でよくあるケースを点検すると…
以下のようなシフトパターンが“違法化”の可能性があります。
- 月前半に「12連勤」
- 夜勤の入り・明けを含め“実質連勤”が続く
- 月末・月初で「制度上途切れているが実質15日働いている」
とくに 夜勤を含むシフトでは、見かけ上「勤務→休み→夜勤前日待機」などが連勤扱いになるケースがあります。
チェックポイント
以下のような職員がいないか確認してください。
- 1人だけ夜勤回数が突出している
- 夜勤明けに「ほぼ休めていない」状況が続いている
- 月中に2週以上の連勤が“当たり前”になっている
- 欠員代行や急なヘルプで連勤が増えがち
経営に与える影響
- シフトの偏りが発生している事業所は修正必須
- 欠員補充・代行を「特定の人」に偏らせる運用をやめる必要
- 夜勤明けの活用方法を見直す必要あり
→ 人手不足の事業所ほどこの改正で「シフト再設計」が必須
勤務間インターバル「11時間」が義務化された場合
インターバル制度とは?
退勤から次の出勤まで、最低11時間の休息を確保するルール です。
介護現場で特に問題になるのは以下のパターン
① 夜勤明け → 早番
夜勤終了が9:00、早番が7:00スタートの場合、
「9:00退勤 → 11時間後=翌20:00以降でなければ勤務不可」。
つまり、
夜勤明けの翌日に早番を入れるシフトは不可能 になります。
② 遅番 → 早番
遅番22時退勤 → 翌7時出勤
これはインターバル9時間となり、完全アウト。
③ 夕食介助で残業 → 翌日の早番
残業が30分伸びるだけで、翌日の出勤時間が変わる場合があります。
実務上の影響は非常に大きい
介護事業では、
- 夜勤
- 早番
- 遅番
- 残業
- 緊急対応
- 利用者の急変
- 送迎時間のずれ
など、不確定要素が多い職種です。
そのため、
「インターバル11時間」は、最も実務影響が大きい改正の1つ
といえます。
夜勤・早番・遅番シフトはどう変えるべきか?
以下は、現場の相談が多い順に整理した「見直し必須の領域」です。
① 夜勤後の「明け」を完全休みにする
現在でも多くの施設が採用していますが、
- 夜勤明け → 半日勤務
- 夜勤明け → 会議だけ出席
- 夜勤明け → 研修参加
といった文化が残っている事業所は要注意。
夜勤明け=休息日として扱う方向に統一する必要があります。
② 遅番と早番を連続させない
遅番(〜22:00)→ 早番(7:00〜)の組合せは、
インターバル11時間を満たしません。
対策
- 遅番の翌日は基本「日勤or遅番」に固定
- 遅番の翌日は休みにすることも検討
- 遅番者が多い日は早番人数を増やして調整
③ 残業時間が多い職員のシフトを別枠管理
介護職は残業が突発的に発生しやすい職種です。
そのため、
インターバル違反は“残業で起きる”
ことが非常に多いです。
システム的に「残業発生時は翌日の出勤時間を自動調整」できる仕組みが理想
④ シフト作成者(管理者)への教育が不可欠
シフトを組む管理者・リーダーが制度を理解していなければ、
どれだけルールを整備しても違反が発生します。
管理者への教育として次を徹底してください。
- 連勤14日ルール
- インターバル11時間の考え方
- 「夜勤明けの扱い方」
- 「遅番→早番は禁止」の認識
- 残業発生時の調整ルール
勤怠管理システム(介護ソフト含む)で必須のチェック項目
2026年の改正に対応するためには、
勤怠システムが“自動チェック”できるかどうか が重要です。
チェックすべきポイント
- 連続勤務日数のアラート
- インターバル違反の自動判定
- 夜勤明けの扱い設定
- 休憩時間の自動付与
- 有給時の時間数計算の正確性
- 時間外・深夜の割増設定の正しさ
システム×運用 の両輪で整備しないと、法改正後に混乱が起きます。
訪問介護・通所介護・入所系での影響がどう違うのか?
介護サービス形態によって、影響度は大きく異なります。
① 訪問介護
- 早番・遅番の概念が比較的少ない
- ただし「移動時間」「待機時間」がインターバルに影響
- 夜間対応型訪問介護は夜勤扱いの見直しが必要
個別スケジュールのズレがインターバル違反を招きやすい
② 通所介護
- 送迎遅延・延長が多い事業所ほど注意
- 遅番職員が送迎で遅くなる→翌日の出勤時間調整が必須
③ 施設系(特養・有料・GH)
インターバルの影響が最も大きい領域。
- 夜勤明け→早番が完全NGになる
- 遅番→早番も完全NG
- 連勤14日ルールに最も引っかかりやすい
シフトパターンの抜本見直しが必要
2026年法改正に対応する「新しいシフト設計」の考え方
以下の順で再設計するとスムーズです。
- 夜勤前後の勤務
- 遅番→早番
- 月平均の連勤数
- 残業が多い職員の傾向
「インターバル違反マップ」を作ると効果的です。
- 夜勤専従を増やす
- 遅番専従を増やす
- 早番専従を増やす
- 管理者のバックアップ人員を確保
導入メリットは、
“違反が起きないようにする仕組み” が作れることです。
夜勤明けに対応できない理由を伝えるため、
「インターバル制度導入の説明文」を作成しておくとクレーム予防になります。
まとめ:介護事業のシフトは2026年に大きく変わる
2026年の労基法見直しは、
介護業界の“シフト文化”を大きく変えるきっかけになります。
- 夜勤明け=休みに統一
- 遅番→早番は禁止
- 連勤は最大14日まで
- 勤務間は11時間確保
- シフトは「人に依存」から「仕組みに依存」へ
- 勤怠システムの刷新が必要
これらは、
職員の健康を守るための改革であると同時に、
離職率の低下・採用力向上につながるチャンス です。
【2026年法改正】シフトNGパターン一覧
■ 夜勤関連のNG
- 夜勤明け → 早番(インターバル不足)
- 夜勤明け → 半日勤務・会議出席
- 夜勤 → 夜勤の連続(インターバル不足 & 連勤上限違反)
■ 遅番・早番の組合せNG
- 遅番(〜22:00) → 早番(7:00〜)
- 遅番 → 翌日の送迎対応(早朝)
■ 連続勤務のNG
- 15連勤以上(連続勤務14日上限に抵触)
- 月またぎの実質連勤(シフトの境界をまたぐケース)
■ 残業・延長によるNG
- 遅番の残業で翌日のインターバル不足
- 送迎遅延による残業 → 出勤調整なし
■ 訪問介護でのNG
- 夜間対応型で実質夜勤扱い → 翌朝訪問が早い
- 移動延長によりインターバルが不足
■ 管理者がよくやりがちなNG
- 「人手不足だからOK」と本人に同意を取っている(違法)
- シフト担当者が制度を理解していない