通所介護が直面する5つの課題― 人材不足・ICT導入・制度の壁をどう乗り越えるか ―

通所介護(デイサービス)は、高齢者の在宅生活を支える中核的サービスです。
しかし近年、その役割を果たすうえで 制度的・構造的な課題 が顕在化しています。
本記事では、厚生労働省の制度資料や公的な方針を踏まえながら、
通所介護事業所が直面している5つの課題を整理します。

課題①|人材不足が「前提条件」になっている
通所介護における人材不足は、一時的な問題ではありません。
多くの事業所ではすでに、人材不足を前提に運営せざるを得ない状態にあります。
現場で起きていること
- 採用しても応募が集まらない
- 経験者・有資格者が確保できない
- 職員の高齢化が進行している
その結果、
- 定員を満たせない
- サービス内容を縮小せざるを得ない
- 残った職員への負担集中
といった 負の連鎖 が生まれています。

課題②|ICT導入が進まず、業務が属人化している
人材不足が進む一方で、
通所介護の現場では 紙ベースの記録やアナログな業務運用 がいまだ主流です。
ICT導入が進まない理由
- 初期費用への不安
- 現場職員のITリテラシー差
- 導入後の運用・教育支援の不足
その結果、
- 記録作業に時間を取られる
- 情報共有が口頭・個人依存になる
- 支援内容の振り返りや改善が困難
となり、業務効率と支援の質の両立が難しい構造が続いています。

課題③|個別支援計画が形骸化しやすい構造
通所介護では、個別支援計画の作成が制度上求められています。
しかし現場では、
- ケアプランを転記しただけの計画
- 抽象的な目標設定
- 評価・見直しが形式的
といった 「書類として存在するだけの計画」 になりやすい実態があります。
公的制度から見た裏付け
厚生労働省は、介護給付適正化事業の中で
「ケアプラン点検」を主要施策として位置づけています。
これは、
計画の内容が利用者の自立支援に資しているかを点検・改善する必要がある
という 行政側の認識 を示しています。
個別支援計画の質が 制度的にも課題として意識されている ことが分かります。

課題④|要支援者をめぐる「いわゆる卒業問題」
要支援1・2の高齢者は、介護保険制度の対象のまま、
訪問介護・通所介護については
市町村主体の「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」 を利用しています。
問題の本質
- 総合事業は 市町村裁量が大きい
- サービス内容・人員配置・専門職関与に差が出る
- 同じ要支援者でも地域で支援の質が異なる
この切り替えが現場では
「通所介護を卒業させられた」
と受け止められることがあり、これが 「卒業問題」 と呼ばれています。
課題⑤|軽度者支援が不十分だと「重度化リスク」が高まる

厚生労働省の資料では、
軽度者・要支援者への支援は「重度化防止・自立支援」を目的とすべき
と明確に示されています。
これは裏を返せば、
適切な支援が行われなければ、
状態が進行し重度化するリスクがある
という 制度上の前提認識 があるということです。
現場での懸念
- 総合事業で十分な支援が受けられない
- 生活機能低下を早期に防げない
- 結果として要介護度が進行する
軽度者支援の質は、将来の介護負担に直結する課題です。
5つの課題は相互に連鎖している

どれか一つだけの問題ではなく、
構造的な連鎖として通所介護を圧迫していることが分かります。
まとめ|通所介護は「転換点」にある
通所介護は今、
- 人材不足を前提にした運営
- 業務効率と支援の質の両立
- 地域差を抱えた軽度者支援
という 難易度の高い局面 に立たされています。
一方で、
ICT活用・支援計画の質向上・地域特性に応じた役割設計によって、
新たな価値を発揮できる余地も大きい段階です。